咳喘息について
咳喘息は、気管支でアレルギー反応が起こることで長期間にわたる咳が続きますが、喘息特有の喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)や息苦しさ・呼吸困難は伴いません。
主な症状は乾いた咳が長期間続くことです。
気道過敏性が高まっており、会話や乾燥した空気、寒暖差、食事などの些細な刺激で咳が出ます。
長引く咳の原因では、日本国内で一番多いとされています。
吸入気管支拡張薬や吸入ステロイドを使った吸入薬治療が有効です。
咳喘息を自力で治すことは難しいため、医療機関を受診し、吸入薬を用いた治療を受けましょう。
咳喘息の主な症状
咳喘息の咳は、就寝時、深夜、早朝に目立ち、冷気、会話、運動、受動喫煙、雨天、湿度の上昇、花粉、黄砂、精神的ストレスなどの要因で悪化します。
症状には季節性があり、花粉などのアレルゲンが関与していることもあります。
また、ペットやダニ、ハウスダストなどの生活環境も引き金となるケースも多いです。
通常、咳喘息の症状は乾いた咳が長く続き、痰が出ることはほぼありません。
アレルギーによる気道過敏性の亢進が原因であり、喘息とは異なり、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)や息苦しさは伴いません。
咳喘息の咳には、気管支拡張薬が有効なことが多く、これが効果を示せば診断に至ることもあります。
咳喘息が起こる原因
咳喘息は、気管支でアレルギー性の炎症によって咳が続く病気です。
このアレルギー性の炎症には様々な原因があります。
風邪がきっかけで咳が長引き、病院で咳喘息と診断されるケースが多いですが、ご自宅でのダニやハウスダスト、花粉症、イヌ・ネコなどのペットがアレルギー反応の引き金となっていることも多々あります。
また、喫煙や肥満、精神的ストレスも咳喘息や気管支喘息の発症に大きく関わっています。
近年では、新型コロナウイルス感染症後に咳が治らず、検査によって咳喘息と診断されるケースが増加傾向にあります。
これらの原因や要素が複雑に重なり、咳喘息が発症するのではないかとされています。
検査
咳喘息は、呼吸機能がほぼ正常範囲内であり、気道過敏性が軽度に亢進し、気管支拡張薬が有効であることが特徴です。
以下が診断基準です。咳喘息が疑われる場合は、診断基準を参考に以下の検査を実施します。
ただし、全ての検査を行うわけではありません。患者様の病状に応じて適切な検査を選択します。
呼気一酸化窒素濃度測定
呼気中の一酸化窒素の濃度が上昇するかどうかを調べます。特に25~35ppb以上の濃度は、咳喘息の診断に有効です。
胸部レントゲン
咳が長引いている場合は、肺炎や結核、肺がんなどの重大な病気が隠れていないか検査します。
アレルギー血液検査(特異的IgE抗体・好酸球数測定)
咳喘息の患者様の約60%が特異的IgE抗体の陽性反応を示します。
また、採血により好酸球数の増加が確認されることがあります。
治療
一般的に使用される咳止め薬では効果が低いため、気管支喘息の治療に準じた吸入ステロイド薬が第一選択となります。
多くの患者様は咳症状が続いていることに悩んでいるため、吸入気管支拡張剤も併用されることが多いです。
そのため、吸入ステロイドと吸入気管支拡張剤の合剤が処方されることが一般的です。
それでも咳症状が改善しない場合、吸入薬の量や回数を増やす、または抗ロイコトリエン拮抗薬やテオフィリン製剤を追加することがあります。
通常の経過では、数日から数週間で症状が改善しますが、30~40%の割合で典型的な気管支喘息に移行することがあるため、経過観察と服薬管理が必須です。
咳喘息は診断が難しく、気管支拡張薬が効果を示すことから、検査で異常がなくても治療を行い、症状が改善するかどうかを見て診断することがあります。自力で治すことはできませんので、3週間以上続く咳がある場合は、病院を受診し、吸入薬などの治療を受けてください。
咳喘息の重症度・治療内容について
症状 | 治療薬 | |
軽症 |
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中用量吸入ステロイド (使用できない場合は抗ロイコトリエン拮抗薬) |
中等症以上 |
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中~高容量吸入ステロイド +吸入気管支拡張薬 (もしくは抗ロイコトリエン拮抗薬) |
咳喘息の治療期間
咳喘息は、症状が安定している時には咳がほとんど見られないため、自己判断で吸入ステロイドをやめてしまうことがよくあります。
しかし、治療を中断すると咳喘息が再発したり、一部の方は喘息に進行して治療期間が長くなったりすることもよくあります。
当院では、症状が和らいでいる患者様には、これまでの経過、気道抵抗性や呼気一酸化濃度の検査結果、治療内容を総合的に判断し、個別に治療期間について説明します。
漫然と吸入ステロイドを使用し続けることはせず定期的に吸入ステロイドの減量を検討します。
具体的には、過去1年以上治療を実施し、吸入ステロイドを低用量まで減量して症状もなく呼気一酸化濃度が正常範囲内でしたら、治療の中止を検討します。
中止後に症状が再燃した場合は、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。
咳喘息の経過について
「2ヶ月前に風邪を引き、その後咳だけが続いている状況。自力で治そうとしたけど改善できず、1ヶ月前に病院を受診した。
しかし、処方された咳止めもあまり効果がなかった。咳は夜になると強くなる。眠れないこともあるけど息苦しさは感じていない。
以前にも同様の経験があり、その際は1ヶ月ほどで自然に改善できた。過去に大きな病気はなく、花粉症を持っている。」
このような長引く咳の原因で多いのが咳喘息です。夜間や朝の咳が特徴的で、花粉症などのアレルギー疾患を併発していることが多いです。
3週間以上続く咳では、感染症(一般的な風邪)が原因ではない可能性が高くなり、聴診などの診察と検査が必要です。
このケースでは、聴診では呼吸音に異常は見られませんでしたが、呼気一酸化窒素濃度が軽度に上昇しており、吸入薬(気管支拡張剤)の使用により、数日のうちに咳が緩和しました。結果的に、咳喘息と診断されました。